本作の音楽を手掛けたのは、2023年3月にこの世を去った音楽家の坂本龍一。ピアノを基調とした静粛で美しいサウンドで本作の世界観に寄り添った坂本は、「監督からは『音楽で感情を説明しないでほしい』と言われました。僕も同じ気持ちだった」と、公開当時語っている。そんな監督からのリクエストに坂本は、スタジオに大きなスクリーンを持ち込み、本編を流しながら即興でピアノを演奏し音楽を制作。坂本はこのアプローチについて、「映像を観ながら弾いていると、ふっとメロディが降りてくる瞬間がある。それは頭で考えた構成ではなく、映像の呼吸に誘い出された音なんです。後で聞き返してみたら、自分でも驚くほど静かで、強い孤独を感じさせる音になっていました」という言葉を残している。なかでも孤独を意味するタイトルの楽曲「Solitude」は、『Ryuichi Sakamoto|Opus』(24)ほかコンサートでも多く披露した代表曲であり、坂本氏にとっても大切な一曲。まもなく坂本氏の4周忌を迎える今、静寂の中に紡がれる旋律を劇場で体験してほしい。
また、市川準監督作品『大阪物語』(99)の脚本を務めたほか、長年に渡って親交があった映画監督の犬童一心からコメントが到着。主人公の喪失と深い悲しみを通して、孤独と静寂を映し出す本作。2014年から毎年開催されている「市川準監督特集」の企画も務める犬童は、「市川準の部屋に行くと、真ん中に『孤独』という椅子があってまずそこに座る。えこ贔屓は無し。みんな一人。それが清々しい」「市川さんの孤独には温もりがある」と、市川監督ならではの「孤独」の心地よさに共鳴した。それぞれのコメント全文は下記の通り。
■坂本龍一(音楽)
監督からは『音楽で感情を説明しないでほしい』と言われました。僕も同じ気持ちだった。
映像の中に流れる孤独な空気、その『隙間』を埋めるのではなく、隙間そのものを音にするような感覚でした。
映像を観ながら弾いていると、ふっとメロディが降りてくる瞬間がある。
それは頭で考えた構成ではなく、映像の呼吸に誘い出された音なんです。
後で聞き返してみたら、自分でも驚くほど静かで、強い孤独を感じさせる音になっていました。
(公開時の発言より)
■犬童一心(映画監督)
市川準の部屋に行くと、真ん中に「孤独」という椅子があってまずそこに座る。
えこ贔屓は無し。みんな一人。それが清々しい。市川印の椅子は、材質も座り心地も最高です。
宮沢りえさんが、市川さんのことをかけがえのない人と言っていた。
心から同意します。市川さんの孤独には温もりがある。